ボクシングコラム!〜日本人チャンピオンの歴史、ガッツ石松〜
マラソンの有森裕子の、「自分をほめてやりたい」 など、
スポーツの世界から派生した流行語は、枚挙にいとまがないが、
この言葉ほど、一般的に浸透し、なおかつ、今日まで普通に使用されている言葉はない。
それが、この試合で誕生した、「ガッツポーズ」 だ。
KOで勝利が決定した直後、石松が飛び跳ね、
拳を突き上げた様子から、生まれた言葉だ。
不屈の闘志で、世界チャンピオンを掴み取ったガッツ石松が、
無意識に繰り出したポーズが、普遍的な言葉を生み出し、
今も、使い続けられているのだ。
やっとの思いで掴んだ、3度目の世界王座挑戦の機会だったが、
相手は、62勝のキャリアを誇る、ベテラン・王者ゴンザレス。
しかもその内、50勝はKOという、ハードパンチャー。
対する石松の戦績は、26勝11敗5分。
あまりにも見劣りする戦績に、
石松の勝利を予想する者は、皆無に等しかった。
いつものように、股旅スタイルでリングに登場し、
三度笠を投げた石松は、スタートから快調に飛ばす。
いくら、チャンピオンがスロースターターとはいえ、様子がおかしい。
めったに観ることのできない、大番狂わせの予感が、会場に立ち込める。
迎えた第8ラウンド、石松の強打が炸裂する。
倒れたゴンザレスを、レフェリーは不当にも、
ゆっくりカウントを数え、救おうとする。
しかし、石松の強打は王者の体力を奪っていた。
こうして、日本人初の、世界ライト級王座が誕生した。
このKO勝ちを決定づけた、右のパンチは、
”幻の右” として、語り継がれている。
現在も、タレントとして広く活躍している、ガッツ石松。
ガッツポーズを生んだ、天性のキャラクターが、
その理由と言えるだろう。