ボクシングコラム!〜日本人チャンピオンの歴史、浜田剛史〜
これまで、日本に多くのハードパンチャーが誕生してきたが、
なかでも、そのハードパンチで名を馳せていたのが、浜田剛史だった。
あまりにもパンチが強すぎるため、
左拳を4回も骨折し、2年間試合ができなかった時でも、
浜田は決して練習を休まず、黙々と練習に励んできた。
時代が、バブルに突入しようとしている頃、
ファジーという言葉が流行る中、一途に、
世界チャンピオンを目指す、その求道者の様な姿は、
軽薄な時代に、一石を投じるものであった。
日本、東洋太平洋の、ライト級王座を獲得し、
満を持して臨んだ、世界J・ウェルター級タイトルマッチ。
相手のアルレドンドも、ハードヒッターだった。
一か八かの速攻に、賭けることを決めていた浜田は、
1ラウンド開始と共に、アルレドンドに襲いかかる。
頭をつけて押しまくり、アルレドンドを、
ロープ際に追い詰めていく。
残り10秒ほどで、第1ラウンドが終わろうとした、その時だった。
浜田の右フックが、アルレドンドの顎を撃ち抜く。
かろうじて持ち直したチャンピオンに、
浜田は容赦なく、左右のフックを浴びせ続ける。
キャンパスに、深々と沈むチャンピオン。
レフィリーがカウントを数え、観客が熱狂する中、
浜田は悠然と、ニュートラルコーナーで立っていた。
カウント10が数えられた瞬間、両国国技館に無数の座布団が舞い、
両コーナーのセコンドと関係者が、一気になだれ込んだ。
衝撃の、1ラウンド・KO勝ち。
約4カ月ぶりに誕生した、日本人チャンピオンの姿に沸きかえる中、
表情を変えずにたたずむ、浜田の姿が印象的だった。
現在は、解説者などで活躍する浜田剛史。
その衝撃の1ラウンドKO劇は、時が経ても、決して色あせることはない。